前回までは健康診断の中で、血液検査と、X線(レントゲン)検査についてのお話をしてきました。
今回は超音波(エコー)検査についてのお話をしようと思います。
まず、超音波とは、X線のようなエネルギーを持つ物質のビームではなく、『音波』、つまり振動の波の一種であり、音として聞こえるよりも細かい波長のものを指します。超音波検査とは、『プローブ』と呼ばれる機械の先端からこの細かい波長の音波=超音波が発生し、物体の表面にぶつかって跳ね返ってきた超音波を同じ機械で拾うことで、機械から物体までの距離を測定する検査なのです。さまざまな内臓から跳ね返ってきた超音波により、それぞれの内臓までの距離を測り、それを画面上に描くことで体の断面図を作りだすことができるのです。
超音波検査では体の断面を見ることができるため、X線検査ではわからなかった水と内臓と腫瘍などのできものとの区別をつけることができます。つまり内臓の中身を見ることができるのです。
また、超音波は血液の中を流れる細胞からも跳ね返ってくるため、超音波検査では血液の流れを知ることができます。さらに超音波はプローブから常に発生していますので、動いている臓器について、その動きをリアルタイムに見ることもできます。この2つの特性から、超音波検査は常に動いて血液を送り出している心臓の検査が得意なのです。
しかし、超音波には2つ苦手なものがあります。
1つ目は肺と骨の検査です。超音波を完全に反射してしまうものにぶつかると、それより先にあるものまで超音波が届かず、表面しか見ることができないのです。肺に含まれる空気と骨がこれに当たります。胃や腸にもガスが含まれていると、それより深い部分は見ることができません。
2つ目として、超音波検査は体の断面図を見る検査ですので、X線検査のように一枚の写真にいくつかの内臓がいっぺんに写される検査とは違って、体全体を検査するには時間がかかります。そのため、その間動物にはじっとしていてもらわなければならないのです。この理由から、超音波検査には時に鎮静薬が必要となる場合があります。
また、これはX線検査と超音波検査の両方に言えることですが、肝臓や腎臓の大きさ・形・数がおかしい、できものがあるかどうかといった検査はこの2つの検査によって知ることができますが、『どのくらい異常なのか』については分かりません。この部分は数値で知ることのできる血液検査が得意な分野ですね。
このように、血液検査・X線検査・超音波検査はどれか1つではなく、組み合わせることで病気や生き物の状態を知ることができる検査なのです!
ここまでの3つが、健康診断のメインとなる検査の説明でした。
次回からはやや特殊となる検査について、少しだけご説明させていただきます。
下落合、目白、椎名町エリアのイヌとネコの動物病院
聖母坂どうぶつ病院 院長 田草川
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