当院の麻酔の管理

当院の麻酔の管理

その子に合う、オーダーメイドのバランス麻酔を
実施しています。

全身麻酔は、
「鎮静(意識を消失させる)」
「鎮痛(痛みを消失させる)」
「筋弛緩(動かないようにする)」
という3つの要素があり、主にその内の2つ、「鎮静」と「鎮痛」を目的として行われます。

しかし、ほとんどの全身麻酔薬には「鎮痛」の作用が無く、痛みを伴う処置をすると、処置中に意識が戻ってきてしまうことがあります。
これは非常に恐ろしいことです。

だからといって全身麻酔薬を大量に使うと、今度は血圧低下等の副作用が起こってしまいます。

そこで、「鎮痛薬」を一緒に使用することで全身麻酔薬の量を多くせずに無意識を維持し、手術の痛みをおさえることができます。
このように、複数の麻酔薬、鎮痛薬、筋弛緩薬を組み合わせて行う全身麻酔を「バランス麻酔」と言います。

ですが、それでも全身麻酔の影響は、年齢や種類、性別、その時の状態や持病、行う手術の内容など、いろいろな要因によって変化してしまいます。
そのため当院では更に、麻酔を受ける子に合わせて毎回必ずオーダーメイドの麻酔計画を立て、より安全で効果的なバランス麻酔を心がけ、実施しています。

手術のみに留まらない「鎮静」の有用性

「鎮静」の有用性イメージ

全身麻酔の要素の一つである「鎮静」の目的。
それは、「動物の不安を取り除くこと」です。

動物たちが病院など、普段生活している以外の場所で、非常に興奮してしまったり、時に攻撃的になってしまう原因の多くは、「不安」や「恐怖」によるものであると思われます。
一見落ち着いてみえる子でも、病院では緊張しているものです。
それは人も同じですよね。

検査や治療に当たって、動物が不安を感じていることは多く、興奮が過ぎれば精密な検査は難しくなることもあります。さらに検査や治療に嫌な印象を持ってしまえば、次に検査や治療をする時にはもっと抵抗することでしょう。そのため、ときに不安をとる(抗不安)ため、興奮を抑える(鎮静)ために鎮静薬を使うことが勧められます。

麻酔・鎮静の安全性

モニタリング

麻酔・鎮静に於ける、ストレスや体への負担に関する質問をいただくことがありますが、その答えは「ストレスとは何か」「負担とは何か」によって大きく異なると思います。
ただ、おそらくご家族の皆さんが気になるのは、「その後にこの子の具合が悪くなることはないか?」ということだと思います。

鎮静薬は、一時的ですが心血管・呼吸器に副作用を及ぼします。
ですが鎮静薬や麻酔薬(鎮痛薬、筋弛緩薬)は、そのときだけ投与するものなので、日常的に飲むような薬のように体に蓄積する・残るということはなく、投与を終了した時点でどんどんからだから抜けていきます。

鎮静や麻酔が終了して、からだから鎮静薬が消えていけば、副作用はどんどんなくなっていきます。

しかし、処置中に副作用が強く出て、血圧が下がったり酸素がまわらなくなったりした場合、何も対処しなければ腎臓、脳、心臓などに後遺症をのこすことになってしまいます。

そのため、これらの副作用が出ていないかどうかを「モニタリング」することでいち早く察知し、薬・点滴・人工呼吸などを使って対処します。

また当院では、鎮静・麻酔の「負担」を前もって予想することでオーダーメイドの麻酔計画を立て、安全性を高めています。
そのためにも全身麻酔の前には「術前検査」をおすすめしています。